21世紀に求められる「問い」の力とは

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はじめに

2016年で自分の中に残ったキーワードとして「問い」というものがあります。

イベントや本などでその言葉を多数聞いたので、自分なりに「問い」とは何であるかを整理し、その言葉を中心にして今後世の中に求められていくキャリア像や、2017年の個人的な活動の方向性を考えようと思いました。

 

「問い」で人と繋がる

今年もボランティアスタッフとして参加した「Tokyo Work Design Week」では、7日間のプログラムの中で異なるゲストの口から「問い」というキーワードを何度も聞くことになりました。

 

例えば、オランダではNPOに多数参加しているのが普通だと言います。

その理由としては、オランダでは小さい頃から安楽死大麻であったり、教育や介護などのカテゴリーで社会課題に触れる機会が多くあるそうです。

自分や自分の周りに転がっている困っていることから問いを立てるということが、環境的に行われやすいと言うことです。

 

また、ゲストに予防医学研究者の石川喜樹さんを迎えたプログラムでは、人と人のマッチングでは、答えやアイデアではなく「問いが共通」だと繋がりやすくなるという話がありました。

 

「問い」を「ビジョン」という言葉に置き換えた時に、会社と人のマッチングでもやはりビジョンにどれだけ共感できるかというのが大切なポイントだと思いますが、それは個人と個人の間でも同じことだと思います。

個人が情報発信して当たり前の時代では、その人が発する問いにどれだけ共感できるかが重要であり、その部分での本質的なマッチングがますます主流になっていくのではないかと感じています。

 

「問い」の原体験を得る

今年半年間通っていた講座「企画でメシを食っていく」のゲスト講師としてもお話を伺えた、キングコング 西野亮廣さんの著書『魔法のコンパス』では、問いを持つためにはまず問いが落ちているような足場の悪い場所にいくことが大切だと言っています。

つまり、人生を賭けるほどの「問い」を見つけるためには、居心地の悪い場所に立つ必要がある、というか居心地の悪い場所に立った方が「問い」が見つかりやすい。

だから、ときどき「生きづらい世の中だ」と嘆いている人を見ると、羨ましくて仕方がない。「何故、生きづらいのか?」「それを改善するためにはどうすればいいのか?」といった「問い」に囲まれているわけだ。天然でボーナスステージに立ってんじゃん。

とにもかくにも、まず「問い」を持つ。
「問い」を持つために、「問い」が落ちている場所に行く。

西野さん自身は、「芸人がひな壇に参加しないで生きるにはどうすればいいだろう?」という「問い」を持ち、その問いに人生を賭けてみることにしたということです。

 

このような「人生を賭けるほどの問い」とは、「ミッション」とも言い換えられるものだと思います。

トーマツベンチャーサポートの斎藤祐馬さんの著書『一生を賭ける仕事の見つけ方』では、問い、つまりミッションのタネが落ちている場所について以下のように語っています。

ミッションのタネは、人生の<山>か<谷>かのどちらかにあることが多い。

このように、人生において<山>や<谷>を味わった経験を、僕は「原体験」と名づけている。

「原体験」は、自分が何を大切にするか、という価値観の形成に大きく関わっている。自分のミッションを見つける第一歩は、自分の「原体験」を自覚することにある。

 

「問い」で脱コモディディ化を目指す

斎藤さんは「ミッション」を「自分が本当にやりたいこと、自分にとって大切なことから生まれる仕事」と定義し、スキルやキャリアを追求する「キャリア志向」の働き方では他の誰かや何かに代替される可能性があるが、ミッションを歩む「ミッション志向」の働き方では他の誰にも何にも代替されることはないと言っています。

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近年のAI(人工知能)やロボットの著しい技術革新もありますが、このようなミッション志向の働き方や生き方が、今後の戦略としてますます有効になっていくと考えます。

 

事業家・思想家の山口揚平さんの著書『10年後世界が壊れても、君が生き残るために今、身につけるべきこと』においては、

我々は、場所と環境を変えることによってしか、新しい視点や問題意識を手に入れることはできない。GoogleFacebookの予測を外し、AI(人工知能)の呪縛から逃れるためには、私達は場所と環境を変え、新しい問題意識を手に入れ続けなければならない。AIは人をどこまでも追いかける。だから君達は『物理的』に逃げなければならないのだ

旅(移動)をし続けなければならない。そうでなければコモディティ化から逃れることはできない。大事なことは知識や情報ではない。意識だ。知識は体験による身体感覚との結合を経て、初めて知恵となる。そして、物理的な環境の変化のみが意識変革をもたらす。21世紀、教育において『教室』は移動し続けることになる。『移動教室』こそが教育の本命となる

というように、問題意識を持つためには旅(移動)が必要不可欠と言っており、また、機械による最適化がされる時代には、人間の仕事はアートとデザインしかないと以下のように述べています。

21世紀の人間の仕事は、アートとデザインしかない。なぜなら言語化されるあらゆる事柄が機械によって最適化されるからだ。この2つをいずれか、あるいは両方身につけなければならないんだよ。特にこれからは、機能ではなく、コンセプトやデザインでビジネスを強化することが増えるだろう。人々にどう認知されるかが大事になってくるからね

 

世の中に問いかける、アーティスト的起業家の時代

続いて「問い」と「アート・デザイン」、その関連性について整理していきます。

デザイン思考の第一人者、biotopeの佐宗邦威さんの著書『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』では、

今後の社会は「変革と創造の時代」にはいっていくなかで、ビジネスのリソース管理のスキルを主に学ぶMBA(Business Administration)ではなく、いま今存在しない価値を作り出すスキル(Creation)が必要とされる時代がくるという時代の認識があります。

と言いつつ、KPCBのジョン・マエダさんのインタビュー(2012年 Wired)についてこう述べています。

「いま、イノベーションはデザイン以外のところで生じる必要がある。それを簡単にいうと、アートの世界ということになる。
 デザイナーが生み出すのが「解決策(答え)であるのに対し、アーティストが生み出すのは「問いかけ」である。
 アーティストとは、他の人間にとってはまったく意味をもたない大義、けれども自分にとってはそれがすべてという大義を追求するために、自分自身の安寧や命さえ捧げることもめずらしくない人種である。
 彼がつくり出そうとしていた未来に対するビジョンや、そのビジョンが表す価値観を受け入れ、それに対価を支払っている」

 この話が示していることは、世の中の問題解決をするデザイナーの時代から、自分だけが信じる主観的な世界を世の中に問いかけていく問題提起型のアーティストの時代への変化です。

佐宗さんは、デザイン・エンジニア・ビジネスという3つの円の交差点にいる「越境人材」がイノベーションを語る上で重要と述べており、その領域の真ん中に位置するキャリアとして、「世の中にWHYを問いかけ続けるアーティスト的な起業家」を考えています。

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そのようなアーティスト的起業家の問いかけ、つまりビジョンを通じて、デザイン・エンジニア・ビジネスの3要素を持った人を結合するキャリアを歩む人が増えるということです。

クラウドファンディングなどの登場によって、実現したいビジョンを提示しそれにファンが支援してリソースが集まるというようなことも身近になっており、そのような活動も敷居が下がっていると実感できるでしょう。

 

「問い」を示して、行動を起こす

このようにしてまとめると、「自らの問いを持ち、世の中へ問いかけ、それに共感する人と繋がっていくことができる存在」が今後より求められていくと感じます。

LIFE SHIFT』を読んで書いたこちらの記事でまとめた、「誰もが自らの言葉で、自らの人生のテーマを語れるようになる必要がある」という主張とも通ずるものがあると思います。

 

私としては、2016年はまず作った会社を解散し、その後フリーランスのエンジニア業を中心に活動してきましたが、自分自身の興味関心やこういった時代の流れを踏まえて、やはり自分のビジョンを提示してそれに共感を集めて活動していきたいという思いが強くあり、その活動の一環として「自分の人生の主体的に生きる人を増やす」というビジョンの元、年の暮れから雇われ起業家という活動を始めました。

 

これは自分自身の起業活動の苦労が原体験としてあり、「事業立ち上げフェーズにおいて、コンサルではなくプレイヤーとして活動してくれる人がいたら心強いのではないか?」という問いが発端となっています。

2017年は、こういった活動を中心にフリーランスの立場ながらエンジニア業から事業開発業へのシフトを目下の目標として活動していこうと思います。

 

一人でも多くの人が自分なりの問いを持ち、それを世の中へ提示し、共感を集めながら活動していくことに挑戦して、自分らしいキャリアを実現して欲しいと思っています。

もし何か相談したいことがあればFacebookででもお気軽にメッセージください。

 

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